Google日本語入力

これはネットの世界の「価格破壊」なのだろうか。

これまで有料が当然だと(少なくとも私は)思っていた

日本語入力ソフトの世界で

無料ダウンロードできるIMEがリリースされた。

「Google日本語入力」という

あのGoogleが出した日本語入力ソフトだ。

 

先日、この「Google日本語入力」を早速入れて試してみた。

さすが検索サイトの蓄積を背景にしたソフトだけあって

「今」まさに使われている名詞(特に固有名詞)には

非常に敏感に反応する。

試しに著名人やドラゴンズの選手を入力してみたが

ほとんどが一発できっちりと変換できた。

私は普段ATOKを使っているのだが、

そのATOKよりも名詞の変換では遙か上をいく印象だ。

当然と言えば当然かもしれない。

しかし一方で、文章の作成には多少の難があるようで

時折、日本語の使い手ならあり得ないだろう

文節切りをしてくれることがある。

それはまるで初期のワープロのようだ。

初期のワープロ、で思い出したのだが

私が最初に買ったワープロは

「キャノワード」という、

キヤノンが出していたワープロ機だった。

当時はまだパソコンが普及していない時代、

文書作成にはワープロ専用機が活躍していた。

(さらにその前は、あの「日本語タイプライター」であるが、もちろん私はそれを使った世代ではない)

私のうろ覚えでは

NECの「文豪」、シャープの「書院」、

富士通の「OASYS」なんていうのが

メジャーなワープロ機だったと思うが、

そんな中、キヤノンを選んだのは

当時のバイト先がキヤノンを使っていたからという

ただそれだけの理由である。

同じメーカーのものでないと

フロッピーディスク(これも懐かしい)も受け付けてくれないから、

バイト先で使われていた機種と揃っていないと、

何かと不便だったのだ。

あのキャノワード、10万円程度しただろうか。

バイトして稼いでためたお金をそっくりバイトの道具につぎ込む

(もちろん大学でのレポート作成などにも使ったが、レポートはまだ手書きのことも多かった)

当時の自分を思い出すと、

昔も今も変わらない性分だなあと苦笑してしまう。

そのキャノワード、インクリボンが主流の印刷方式の中、

すでにインクジェットを採用していて使い勝手がよく、

大変気に入っていたし、大いに活躍してくれたのだが、

そこは当時のワープロ、文章の入力には大変苦労した。

今でも時々笑い話として授業で語るのだが、

例えば歴史のプリントで「渡来人」と打ち込むと

何度入力しても「虎偉人」と出てしまう。

当時のワープロは今のIMEソフトのような学習機能が

ほとんどなかったので、単語登録でもしないと

いつまで経っても同じ間違いをしてくれるのだった。

また、長い文章を変換なしで一気に打ち込むと

必ず文節の切り方がおかしくなって

意味不明な変換をしてくれるから

一文節ごとに細かく変換を実行しないといけなかった。

はじめはそれでも良かったのだが

次第にキータッチに慣れてきて

それなりの速さで打ち込めるようになると、

だんだん煩わしくなってきた。

結局、そういうこともあって

私はその後、ワープロ機をもう一台買っている。

それもまたキヤノンの新しいシリーズだった。

今もその「2号機」は塾の片隅でほこりをかぶっているが、

あのときワープロでなくパソコンを買っておけばと

若干の後悔が残っている。

その2号機を買ったころから、世間では一気に

パソコンの普及が進み始めたのだ。

当時はワープロ機とパソコンが併存するようなことを

言う人もいたが、ワープロ機の衰退は

私の予想を超えて早かった。

あっという間に消えたという印象だ。

かく言う私もその流れに乗って、

賢学塾を開校するときにパソコン一式を買いそろえ、

その後ワープロ機を使うことは全くなくなってしまった。

  

閑話休題

Google日本語入力の話に戻ろう。

このGoogle日本語入力だが、

メインのIMEとして使う気は、今のところない。

世間がワード・エクセルで「天下統一」されてしまった今も

一太郎にこだわり続けている自分には、

(さすがに表計算に三四郎は使っていない。エクセルだ)

ATOKの使い心地がやはり一番だ。

Googleのほうでしばらく文章を入力していたら

ATOKの良さを再認識してしまった。

確かに、(たまに間違えて切り替えて使ってしまう)MS-IMEの酷さに比べると

Googleの方が遙かに便利に入力できるとは思ったのだが

Googleは、変換候補ではおそらくATOKを凌駕しているだろうが、

そもそも日本語の文章というは

名詞だけ、単語だけを並べても作れないのである。

言葉と言葉を助詞でつないで紡ぐ日本語の繊細さに

きちんと対応するには、それなりの経験値が必要なようで、

いくら世界中の言葉をかき集めているGoogleといえども

そう易々とは乗り越えられなかったようだ。

もちろん、まだ出たばかりのものであるから、

今後この「Google日本語入力」がどう進化していくのか

とても興味があるところではあるが、

今すぐ全面的に乗り換えるのは止めておこうというのが

現時点での私の結論だ。

 

 

・・・・なーんて言っていると

ワープロからパソコンへの乗り換えのときのように

後悔するときがくるのだろうか。

そうなったときには、日本語そのものが

大きく変わっている気がしないでもない。

そう考えると、ちょっとだけ怖くなってきた。