さあ、あと26日だ。

最初の勝負は六分咲き。
合格した子は、本当におめでとう。
よかった。嬉しいよ。
この声を聞くために仕事をしているようなものだ。
中には「一般で受けても危ない」
そんなふうに言われていた子もいたね。
よく跳ね返したよ。すごいね。
俺がエネルギーをもらっちゃったよ。
今日の緊張と感動を忘れず、
この塾で勉強してきた日々のことも
心の片隅のどこかに置いて(片隅でいいぞ。真ん中に持ってくるな)
高校でも頑張ってほしい。
 
残念ながら落ちた子たち。
確かに「落ちた」ってことだけ見れば
幸せではないことかもしれない。
今晩来れば分かっちゃうことだから書くけど
塾内でも6割の子が合格してしまった。
学校の友達、同級生、隣近所の子、
合格して歓喜している子は、たくさんいるだろう。
そりゃ、定員の半分が決まるんだからな。
午前10時、現地で喜んでいる子を
たくさん見てしまったかもしれない。
そら悔しいよな。俺も悔しい。とっても悔しい。
むちゃくちゃ悔しい。
全員合格するつもり、してもらうつもりで
今まで頑張ってきたんだもんな。
「落ちてもいいや」なんて半端な気持ちで
勉強してこなかったものな。
でも、あと26日間、真剣勝負の熱い勉強が出来る。
毎年言ってるんだけど、
ここから3月13日までが、
今までで一番充実した日々になるんだよ。
そりゃ今日決まった子たちの中には、
一般受験生と同じように勉強を続ける子や
高校の勉強を先取りする子だっているだろう。
でもね、どう頑張っても、
どれだけ気合いを入れても、
やらなくたって差しあたりは困らないっていう勉強と、
志望校の合格が懸かった死にものぐるいの勉強が
同じなんてことは通常はあり得ないんだな、これが。
君たちが高校に進学してから、
スムーズに学習に入っていけるように
4月から自信を持っていきいきと学習できるように
(つまりは「誰かさん」のように高校に入っていきなり派手に蹴躓かないように)
もう少しだけ勉強期間が延びた、そういうことさ。
いや、延びたのでもないな。
本来、公立高校受験生は
3月13日まで受験勉強するものだ。
「一般」ってのを辞書で引くとな、
「ありふれていること。あたりまえ。普通」
って書いてある。(大辞泉より)
特色化選抜で合格するのは「特別」な話であって、
一般選抜まで戦うのが「あたりまえ」なんだよ。
特色化って分かるか?
特別な色がついた化け物ってことだ。
そう、化け物なんだよ。
俺は今までも特色化選抜のことを
「特色」なんていうふうに省略せず
いつもちゃんと「特色」って言ってただろう?
化け物ってことをいつも意識してきたからね。
だって、俺にとって見れば、
3月までの君たち中3塾生との最高の時間の真っ最中に、
突然土足で邪魔しに来るようなヤツだからな。
 
それとも、普通は嫌いか?
普通って難しいんだぞ。
普通に生きようったってそうはいかないって人が
どれだけ多いことか。
普通が一番だよ。
普通だと思ってる人はそう言わないかもしれないけど
普通じゃない生活をしている俺はそう思うね(^_^;)
 
まあ、俺のことはどうでもいいんだけど、
これから先、生きていれば
こんな分岐点はいっぱいあるよ。
(お坊さんに訊けば死んでからもあるのかもしれない)
終わったことは、もう振り返らない。
4週間もすればこの戦いは終わるし、
5週間もすれば、今日二つに引き裂かれた
同じ高校を受けた同志でありライバルでもある子たちが
また一緒に学習することになる。
3年後、7年後、10年後、いやその先で
一緒になったりまた分かれたり・・・。
人生それの繰り返しだ。
 
俺は鉄オタ(鉄道オタク)じゃないけど
分かりやすい例が、君たちの、
そして俺たちの地域にはあるじゃないか。
以前も授業で話したことがあるアレだ。
東海道線・南荒尾信号場。
みんなで大垣駅に集合して
西に向かって出発することになった。
今日合格した子たちが乗った列車は、
下り線を真っ直ぐ垂井に向かっていった。
合格しなかった君たちが乗った列車は、
荒尾で分岐して上り線の下側をくぐって北へ分かれ
(そう、君たちが毎日通る踏切のところで上を通っていく、あれが反対方向の上り線。)
玉池や古知丸や昼飯を通って
山のほうへと向かっている。
あの線路は、前も言ったようにペアになる上り線がない。
下りだけの単線だ。
しかも西へ向かいたい身としては
方角も途中まで何となく違う気がする。
初めて通る人間は不安になるよな。
でも、関ヶ原まで行けば
2つの線路はまた合流するんだ。
君たちのほうがちょっと遠回りだし
確かに垂井駅じゃ降りられない。
けど、垂井なんて隣の駅じゃないか。
君たちの目的地は次の駅か?違うだろ?
関ヶ原でもないよな。
君たちの目的地は日本の果てですらないかもしれない。
そんな旅の途中、
これくらいの違いは通過しちゃえば一緒だ。
それに、君たちは知らないかもしれないけど、
特急とか貨物列車はみんな
遠回りの単線のほうを通ってるんだぜ。
つまり垂井駅はスルーなんだ。
まさに「急がば回れ」だよな。
(鉄道ファンの方でダウト!と言う方がいたらご連絡ください(^_^;))
もっと言えば、垂井に向かう下り線は
東海道線の「本線」じゃないんだってさ。
君たちのように進む、
下りしかない沿線の風景もちょっと寂しい単線のほうが、
実は下りの「本線」なんだと俺は聞いたぞ。
普段使ってる人はそんなこと考えもしないよな。
世の中、表面だけ見ても分からないことだらけなんだよ。
それを今日も明日も明後日も、勉強していくのさ。
 
でも、先生、俺が乗った列車は
美濃赤坂線に入っちゃいました。
そんな子もいるかもしれない。
そうなったら本当に行き止まりだな。
でも大丈夫だ。
列車は美濃赤坂で折り返し運転するから
それほど待たなくても発車してくれる。
大垣駅まで戻って、また乗り換えればいい。
君たちも荒尾駅で電車に乗ったことがあるだろう。
大垣駅なんてすぐに着くぞ。
車掌さんからきっぷ買おうと思って
財布出してモタモタしていたら
もう着いちゃう距離だ。
大垣駅に着いたら、今度はちゃんと間違えずに乗るんだ。
1番線か2番線だぞ。
そう、人生そうやって出直すことだってできるんだよ。
 
分かってくれたかい?
とにかく、気心の知れた仲間たちと
3月13日まで真剣勝負が出来るなんて
いいことじゃないか。
俺もやりがいがあるってものよ。
そりゃ今までも君たちは真剣だったけど、
今日からの空気はさらに変わるぞ。
そんな空気の中で仕事が出来る自分は幸せよ。
ありがとう。君たちは俺の宝物だ。
 
今宵、新たなドラマが、また始まる。
主役はもちろん、君たちだ。