岐阜県入試の平均点は何を平均しているのか(4)
シリーズ第4弾。
いつまでも書く予定はないのだが、なかなか話が終わらないのである。
<3月4日の変>
2026年3月4日夜、今年の入試の解答速報を報じたぎふチャンのテレビ番組が今までと違う対応をした(ことに気付いたのは私だけだったのだろうか)。
あの番組では毎年予想平均点を示している。
各教科ごとに、そして5教科の合計点についても。
その予想平均を提示する際に前年、そして前々年の実際の(県教委発表の)平均点も比較対象として出す。
5教科の平均点が、各教科の平均点の和でなく、県教委発表に記載してある「5教科の総点の平均」になっていたのである。
前年・令和7年度だけでなく、前々年・令和6年度までも。
2025年春までのテレビ解答速報にあわせてkengakujuku.netの5教科平均点を「各教科の平均点の和」としてきた私は「これは大作業が必要になったか」と慌てた。
県教委が平均点として示している「5教科の総点の平均」と各教科の平均の和が違うことは既に述べてきた。
その違いをどこからか指摘されたのか。
あるいは彼ら自身の方針転換があったのか。
とりあえずただの気まぐれで彼らが方針転換をしたわけではないことはすぐに想像された。
昨年7月の令和7年度の入試結果の発表で、県教委は重大な転換をこっそり行っていたからだ。
その令和7年度入試の成績の県教委発表について語る前に、まずその前章となる話をする。
<3月4日の入試をまとめていう呼び方は存在しない>
今年は2026年3月4日(水)に行われた、私たちが「岐阜県公立高校入試」と呼んでいるもの。
いちおう「第一次選抜」といっているが、実はあの学力検査を受けたのは厳密には「第一次選抜」と呼ばれる入試を受けた人だけではない。
a)全日制の第一次選抜
b)定時制の第一次選抜
ここまでは「第一次選抜」そのものだが、
c)連携型選抜
d)帰国生徒選抜
e)外国人生徒選抜
f)県外募集選抜
これらの選抜は「第一次選抜学力検査」を受ける別の選抜という制度設計になっている。
これだけの公立高校入試が2026年3月4日に行われた。
といっても受検生はそんなことは意識していないだろう。
みんな高校で同じ問題の学力検査を受けている。
外形的に違うのは受検教科、検査内容だ。
このうち受検教科に注目する。
a)はもちろん5教科の学力検査を実施する。
「独自検査を含む選抜」を出願し、部活動等の秀でた成績で選抜されようとする生徒も含めて全員が5教科の学力検査を受けることは周知の通り。
b)では高校によって受検教科が3教科、2教科のところがある
c)では高校によって受検教科が3教科のところがある。
d)と e)は3教科である。
f)は5教科実施するので受検科目は a)と同じ。
このうち、d)e)f)は定員の枠外での募集で合格者数も厳格には決められていない。
だからだろうか、d)e)はずっと各教科の平均点からも外されてきた。
(他方、 f)県外募集選抜については除外規定がない。取り扱いは不明である)
平成31年度以降の県教委発表では、
・各教科の平均点は a)b)c)で出す
・5教科の総点の平均は a)だけで出したもののみが存在する
という状態が令和6年度まで続いていた。
<令和6年度の変化>
令和6年度から、県教委の入試成績分析が抽出調査でなくなった可能性が高いことは以前書いた。
令和6年度から「抽出調査」という記述が消えている。
令和5年度
令和6年度

令和6年度からWEB出願システムに移行しており、システム内に全受検生の得点がある。
(そうでなければWEB出願システムで得点開示もできない)
だから抽出調査にする意味がなくなったのだろうことは以前も書いた。
自動採点によって個々の問題の正答率も全数調査で拾えるようになったのかもしれない。
この年から5教科の総点の平均についての文の最後に「(ちなみに・・・)」から始まる前年度比較が掲載されなくなっている。
抽出調査から全数調査に変わったので比較するのは適当でないと考えたからだろうか。
(ちなみに「ちなみに~」は翌令和7年度も書いていない。これは次の項に書く事情からだろうか)
<令和7年度の変化>
令和7年度、いくつかの点が変わる
変化1)5教科の総点の平均から「全日制の課程の」という限定が消える
変化2)各教科の平均点の表の下から定時制と連携型選抜を含んでいる旨の表現が消える
変化1)に関して
言葉が消えたのだから令和7年度から全日制限定を外したと考えるのが素直な読み方である。
「5教科の総点の平均」なのだから、限定を外したといっても加わってくるのは定時制で5教科を課している一部高校の受検生のみと言うことになる。
他の選抜(c)d)e))では5教科受検しないので「5教科の総点の平均」には当然算入されないと解されるのが妥当である(ここで f)県外募集選抜の取り扱いが分からなくなっている。定員の枠外なのだから除外していたように思ったがここに除外規定がないということは入っているのか)。
変化2)に関して
定時制と連携型選抜はどう扱われているのか。
外されたのか?
冒頭部分で全日制限定を外したのだから、当然入っているということなのか?
また、帰国生徒選抜・外国人選抜の扱いについても何も書かれなくなった(県外募集選抜はその前から何も書かれていないからここでも分からないままだ)。
ここで一つ「トラップ」がある。
成績概要の冒頭では「第一次選抜学力検査の受検者」といっている。
さきほど書いたように c)d)e)f)の選抜も「第一次選抜の学力検査」を(部分的にせよ)行うことが書いてある。
だから自動的に含まれるという解釈は成り立つ。
とすると令和7年度からは a)b)c)d)e)f)のすべての選抜の受検生全体が含まれたということなのか。
それとも言葉通り「第一次選抜」の受検生のみの話なのか。
<受検人数から平均点の母集団を考える>
そこで改めて令和7年度入試の県教委発表の成績概要を見る。
>第一次選抜学力検査の受検者は、12,799人であった。5教科の総点の平均は約314点であり、総点の分布は表4及び図1のとおりである。
と書いてある。


第一次選抜(と連携型選抜)の出願者は上に示した令和7年度の「選抜概要」によれば12,373(全日制)+388(定時制)=12,761人だ。
(出願確定時の出願者数だと12,376+391=12,767になるがこの違いは出願したあとでとりやめた(入学考査料を払っていない)生徒が6人いたということだろう。)
足りない。
ということはやはりこの12,799人にはd)e)f)の選抜も含まれているのか。
平均点の話を突き詰めていて、新しい疑問が生まれてしまった。
いったい残りの受検者がどこから降ってきたのか。
全日制・定時制の第一次選抜に連携型選抜を加えても数が足りない。
これが数字が少しだけ多いなら「本検査の欠席者?」ということになるが、逆に足りないのである。
d)帰国生選抜、e)外国人選抜を入れているのだろうかと出願状況を見る。
11+16=27名
これで12761+27=12,788人。
まだ足りない。
f)県外募集選抜も入れているのだろうかと出願状況を見る。
26名
ここまで合計して12,814名になる。
今度は成績概要がうたう第一次選抜学力検査受検者12,799人を上回ってしまうが、当日欠席者等がいただろうことを考えると、これでほぼ計算があうということになるのだろうか。
なお、d)e)f)の選抜の出願者数等は2025年2月の出願期に出た出願状況の総括表から得た。
2025年7月に出た「学力検査結果」ページの「入学者選抜の概要」資料からは欠落しているからだ。
つまり成績概要とセットの資料では無視されている。
だから含まれていないという解釈もできてしまい少し引っかかるところだが、そうすると人数が足りない。
人数的に入れているという解釈が妥当である。
集計上の大きな変化であった。
何が大きな変化なのか?
平均点を出す母集団が変わったと考えられるからである。
だから「(ちなみに・・・)」で始まる前年度比較が令和7年度でも消えたということだろう。
まとめると、令和7年度の変化は
①「5教科の総点の平均」から全日制限定が消えた → 母集団が変わった?
②各教科の平均から帰国生徒選抜・外国人選抜の除外規定が消えた → 母集団が変わった?
母集団が変わったといっても影響は軽微かもしれない。
①では定時制の5教科実施高校の受検生数十人が増えただけとはいえる(県外募集選抜の扱いがどう変わったか変わっていないのかは話が拡散するので別で書く)。
②も県内全体で30名程度の違いである。
13,000人弱の受検者全体の中ではわずかは人数だとはいえる。
しかし、全日制限定で「5教科の総点の平均」を出し、定時制等も入れた各教科の平均を合計したもの(と思われる)「計」を県教委が公式に出していた時代から、この2つは5点ほど違っていた。
違っているのは「おかしい」のではなく、各教科の平均点と5教科の総点の平均点では母集団が微妙に違うからだと考えられてきた。
そして令和7年度の各教科の平均の和(非公式)と「5教科の総点の平均」も4点違う。
前から書いているように、四捨五入では説明が出来る差を超えている。
無視できる差ともいえない。
だからこの変更について何らの説明もないのは大変残念である。
説明もないまま、令和7年度発表は各教科の平均点も、5教科の総点の平均も、前年までとは対比できない代物に変質している。
<改めて3月4日の変>
テレビ解答速報が前年(と前々年)の5教科平均を各教科の平均の和から県教委の出す「5教科の総点の平均」に切り替えた話。
これを彼らが自主的に行ったのだとしたら、それは県教委の「5教科の総点の平均」から「全日制の課程の」という限定条件が外れたからではないか。
逆に言えば令和6年度までは「全日制の課程の」という条件が書いてあったから「5教科の総点の平均」を用いることができなかったのではないか。
全日制に限っている平均だから全体の平均ではないという説明が成り立つからである(平成の頃からの連続性の問題はここではおいておく)。
全体の5教科平均に変わるものとして、不完全であるが各教科の平均の和を使っているという説明が、令和6年度までは成り立ったのである。
しかし、令和7年度からその前提は崩れた。
「5教科の総点の平均」が5教科受検した全受検生の平均だとすると、彼らにはもうそれを使わない選択肢は残っていなかったかもしれない。
統計的には怪しげな「各教科の平均の和」を使う必要がなくなったともいえる。
こうして彼らは県教委発表の「5教科の総点の平均」を使うことにした。
・・・のだとしたら、令和6年度まで「5教科の総点の平均」に変えることはなかったかもしれない。
令和6年度の「5教科の総点の平均」は「全日制の課程の」という限定条件付きだからだ。
あるいは比較としての令和6年度はそもそも示す必要がなかったのかもしれない。
一方、彼らにとってこれは予想平均の出し方まで変える必要のある変更であった。
以前も書いたように、彼らは5教科総合の予想平均点を各教科の平均を足して出してはいけなくなったはずである。
実態として単純合計とは5点ぐらい違っている。
5教科合計の予想平均は各教科の平均とは別で独立して出さないと、各教科の予想平均をすべてぴたりと当てても、5教科の予想平均は5点前後外れてしまう。
必ず5点外れるというのは大きい。
仮に各教科1点ずつ上に予想を外していたら和は5点外れる。
そこにこの5点が加わると10点違うことになる。
5教科で+10と予想して実際は+15だったなら、上げ下げは外していなかったという総括だろう。
5教科で-3と出したらさきほど書いた必ず外れる5点程度のために+2という結果になるかもしれない。
下がる予想をしていたのに上がったというふうにも捉えられる。
kengakujuku.netでは「解答速報の予想通り前年度とほぼ同じ」と書くだろうが、一般的にはどう見られるだろう。
今年の場合はどうか。
解答速報は5教科で305点と予想した。
彼らは今年も各教科の予想平均を単純合計して5教科予想平均を出している。
比較対象として見せた昨年度の「5教科の総点の平均」は314点。
番組は10点近い大幅下落を予想したことになる。
しかし昨年度までの方式(前年度の公式平均点も各教科の平均点の和:310点)なら、5点しか下がっていないという「あまり変わらない」予想という印象になるかもしれない。
彼らは今年の「変」で自分たちが出す5教科総合平均の予想の見せ方も変えるところまで踏み込むべきだったのかもしれないと私は思ったのだ。
予想平均と平均をめぐる考察はこのあたりで終わりにしたいのだが・・・
<平均点の母集団をめぐる新しい疑問に発展か>
令和7年度入試の「成績概要」にはまだ疑問点がある。
それまでずっと書いてきた「第一次学力検査」のあとの(実施日)が欠落している。
この実施日のところには本検査の実施日がこれまで入ってきた。
もう一度見てみよう。
令和7年度

令和6年度

うっかりなのか意図的なのかわからない。
うっかりだったら何も引っかかることはない。
このシリーズはこれで終わりだ。
だが、意図的に消しているのだとしたら。
「分からないことを分かっていないと、分からないことは分かりません」なのである。
この疑問から先についてはまた明日書くことにする。




