大学入試共通テストまで1カ月ほどになった。
今年の現役大学受験生は、私が突然倒れて高校入試まで送り届けることができなかった第24期生。(彼らを快く引き受けてくれた先の塾には今も感謝している)
3年たとうが何年たとうが、彼らのことを忘れることはない。
既に推薦で大学を決めた子も就職が決まった子もいるだろうが、これから大学受験一般入試組は体調に気をつけて頑張ってほしい。
そして浪人生をやっている第23期生の一部の生徒も。
私が脳幹出血で倒れて今月24日で丸3年になる。
早かったような、長かったような、不思議な3年間だった。
先日書いたが、つい最近も有名人がライブ中に倒れて亡くなったように、脳幹出血という病は生死に直結しやすい。
そして仮に生還できても、いろいろな後遺症と戦っている人は多い。
その中で、私は奇跡的に何の後遺症もなく暮らしている。
本当にありがたいことだ。
変わったことといえば入院中に体重が大きく落ちたおかげで人生初の普通体型を楽しんでいることぐらいだ。
(前も書いたが入院初期はまともに食事ができなかったので一気に肉が削げ落ちた。小学2年生ぐらいから「肥満児」だったので、ほぼ人生初)
医者も「強運の持ち主」と言ったというのは以前も書いた通り。
実際、脳幹出血で比較的軽傷で済んだ人は出血が小さかった人が多いようだが、私は結構な出血量だったようで、それを入院中に病棟でばったり会った医者にわざわざ見せてもらったぐらいだ。
小さい脳幹部の中で、出血が急所を外してくれたようだ。
偶然というほかない。
入院してすぐに自分で「これは脳幹出血ですね」と分かるわけもなく、医者に画像を見せてもらったこのころ、車いすを使えば多少動けるようになっていた自分は、枕元にあったリハビリの計画書か何かに「脳幹部出血」と書いてあるのを見たのだった(それ以前は枕元のものさえ自分で手にとることができなかった)。
病院に差し入れられたタブレットで、脳幹出血というものについていろいろ調べて青ざめた。
自分は最悪、死んでいたかもしれない。
寝たきりで車いすにも乗れなかった人間がやがて歩けるようになり、入院中は4.8km/h(不動産広告の「徒歩~分」の基準)、退院してすぐ5.0km/hを巡る攻防だった歩行速度も今日、ついに5.9km/hを達成した。
退院直後から心ひそかに時速6kmを目標にしていたので、あと少し。
勉強と同じで、継続しているとあるとき突然壁を突き抜けるのかもしれない。
ずっと5.6km/hあたりで足踏みしていたのがうそのように、先月5.7km/hを、そしてつい先日5.8km/hを達成したと思ったら今日5.9km/hが出せてしまって自分でも驚いている。
明日はまた5.8km/hとか5.7km/hに戻るかもしれないが、5.9km/hを一回達成できた(自分でもできるんだ)という実感を得たことは大きい。
この時期に5.9km/hまで来たので、来月の共通テストまでに6.0km/hを達成するのを目標にしようと心に決めた。
あと1か月ほど。
若く健康な人なら何でもない早歩きかもしれない。
私には大きな壁だった。
ここから1か月ではできないかもしれないが、これから大学受験する子たちへのエールのつもりで頑張る。
私もほんの小さなことだが今日も挑戦している。
あなたたちも挑戦してほしい。
それにしてももう3年。
あのとき死んでいたかもしれない人間がもう3年生きてきた。
脳幹出血はそのとき起こった事故のようなもので慢性的な重病ではないので、病気をごまかして現場に立っているんじゃないかとか、本当はからだが悪いんじゃないかなんてことは全くないし、今も健康には留意している。
拾った命を大切にしながら、これからもここに立ち続ける。