定員見通しの話をあれこれ考える

岐阜県公立高校入試の話なので、kengakujuku.netのほうの記事にしようかと思いましたが、自分の考えたことをいろいろ書くだけなのでこちらの雑記にしました。
(以下、ここに書いてあることは私自身の頭の体操です。将来の予想について違うじゃないかと言われても困りますのであしからず。)
あちらの記事にもしましたが、今月中旬に県教委は昨年に続いて今後(再来年春以降)の定員見通しを出しました。
昨年も出している今後の見通しよりも削減幅が緩くなっています(再来年2025年春からの削減見通しに変わりはありませんが)
中学2年生が急にぽっと現れるのは大量の転入しかないのですが、どうもそういうこともなさそうです。
中学生の公立高校人気が高まっているという話も聞きません。
岐阜県の公立高校は今春(2023年春)も全体で定員割れという事態になっています。
この現状を先日の県議会答弁でも教育長は「予想外」だと言っています。
最近の公立全日制高校離れ(通信制などへのシフト)は県教委も予想外だったそうで。
  
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県教委は数年前に2028年度までの公立高校再編・統廃合の凍結を発表していることは以前の記事で書いた通りです。
2028年度まで、岐阜県内では公立高校そのものが消えることはなく、定員の削減調整で対応するということなのです。
上の記事で示したように、
令和6年度からの5年間を計画期間とする県の次期教育振興基本計画の策定に向けては、活性化策の成果を十分に見極めながら、県立高校の在り方についての方向性を定める予定である。
と県教委がうたっていますので、2029年度から始まることが予想される公立高校の再編・統合(県教委は「統廃合」とは言いませんね。以前もそうであったように、次も廃校でなくて「統合」という形をとるのでしょうか)に関しては令和5年度の今、おそらく既に方向性を策定中でしょうが、方向性が決まっても実際に公立高校が減るのはまだ数年先。ちなみに2029年度入試を受ける中3生は今(2023年)の小4生。
  
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以下、今(2023年)の学年で言うと
2024年度入試→現在の中3
2025年度入試→現在の中2
2026年度入試→現在の中1
2027年度入試→現在の小6
2028年度入試→現在の小5
2029年度入試→現在の小4
(入試の年度は高校に入学する年度になりますのでこうなります)
小4生のお子さんの保護者様は高校の統廃合がある(かも)よということは頭に入れておいてください。
逆に言えば今(2023年)の小5生までは岐阜県内の公立高校が消えることはない(はず)ということですね。
定員が減ることはあっても。
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ところが、特にこの西濃地区においては、すでに各高校とも定員を削る余裕があまりありません。
このまま削っていくと超小規模校ばかりになります。
(というか現状でもすでに岐阜地区の高校と比較すると学校規模はどこも小さいのです)
という先を見越して、目先の定員を削るペースをやや緩めたのかもしれません。
勢いよく定員を削っていくと数年先に受験生が明らかに減っているのに定員を削ることができないという状態になるからです。
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そして2029年度から始まるという公立高校の再編統合はどうなるのかは、実は大変深い問題です。
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以前は高校を統合するという形での再編(高校数の削減)をしてきました。
この地区の海津明誠(海津+海津北)とか大垣養老(大垣農業+養老女子商業)などがその例ですね。
上に書いた例では、事実上海津北と養老女子商業の廃校のような形に(校舎はそれぞれ海津高と大垣農業高のあったところが残った状態に)なっています。
いずれも同じ郡(市)内での統合でした。(大垣農業は「大垣」農業ですが、建っていた場所は養老町)
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ところが数年後に始まるのだろう統廃合では、西濃地区において大垣市外の高校ではそういうことが簡単にいきそうにないのです。
揖斐高と池田高は同じ揖斐郡にありますが、不破高は不破郡唯一の高校、海津明誠は海津市唯一の高校です。
西濃地区はそもそも大垣市内に公立高校普通科が集中しています。
大垣北・大垣東・大垣南・大垣西の4校が大垣市内にあります。
人口が約2.5倍の岐阜市内に公立普通科高校は6校(古い人間はつい岐阜市内は5校と言ってしまうところですが、羽島北は旧柳津町にあるので今は市町合併で現在の岐阜市内の普通科は6校)だけなのに対して多いんです。
岐阜市内にはさらに隣の各務原市(大垣市とあまり変わらない人口ですが各務原には普通科は2校だけ)からも多く通っていますから、実際の「高校数密度」の差はもっと激しいのです。
各高校の定員が違いますから(岐阜市内の普通科高校はそれぞれの定員が多め)、定員比で見るとそこまでの差にはなりませんが。
つまり岐阜地区の普通科高校には少子化の進行にあわせてまだそれぞれの高校の定員を削る余地がありますが、西濃地区の普通科高校にはそれほど削減余地が残っていないということです。
普通科という括りで言えば、岐阜市内には私立高校がたくさんあります(大垣市内には大垣日大だけです)が、今は公立高校の話をしているのでとりあえず横に置きます。
  
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西濃地区の話に戻しましょう。
いずれ避けられない将来の、差し当たっては2029年度以降の高校数削減の話です。
大垣市外の各高校の地元からすれば、次は大垣市内の高校を減らしてくれないと西濃地区の高校分布のバランスが悪いということになるでしょうし(前回の再編では上記のように大垣市外の高校が減りました)、大垣市の人からすれば、市外に高校があっても通いにくいし、もうずいぶん長いこと大きく定員割れし続けている高校(つまり大垣市外の高校)から減らしてほしいということになるでしょう。
これは簡単には片付かない問題になるかと思います。
地元に高校がないというのは過疎化の一因にもなり得ます。
つまりは政治の課題なのです。 
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大垣市内の高校と大垣市外の高校を「統合」するといっても、その場所が結局大垣市内の高校なら、大垣市外の人からすれば地元の高校の廃校に等しいことになります。
といって大垣市内のどこかの高校が海津明誠や不破と統合されて海津や垂井に「移った」という形になったら、それはもう今の海津明誠高や不破高と同じ立場に置かれることになり、遠方からの場所の不便さもあって(今の海津明誠や不破と同じように)すぐ定員割れを繰り返すことになり、じきにさらなる再編が必要になるでしょう。
そういった事情を考えると西濃学区でかろうじてまだ統合する余地がありそうに思うのは同じ郡内にある揖斐高と池田高ですが、交通の便が悪くない(養老鉄道でも通える)池田高は比較的歴史が浅く、揖斐川町の中心部に近いとはいえ鉄道もなくなった不便な場所で規模も小さい揖斐高のほうが、戦前の農林学校からの古い歴史を持っています。
それぞれの高校のOBのほか、それぞれの地元の立場もあり、そう簡単にはいかないでしょう。
専門学科の統合も必要になるかもしれません。
大垣工業高はここしばらく定員割れが続いていますが、こちらも歴史がありますし、大垣がずっとものづくりのまちとして栄えてきた経緯や西濃地区で唯一の工業高校ということを踏まえると「工業系高校の再編は他地区でどうぞ」ということになりそうです。
もし仮に手を付けるなら総合学科として再出発して他校と統合する(岐阜総合がそのパターンで生まれていますね)しか手はありませんが、果たしてそれが許されるでしょうか。
西濃地区では揖斐と海津明誠と大垣桜に散らばっている家庭科系の学科は、今の子供の減り具合からすると将来的には一つにまとまったほうがいいかと思いますが、どこにまとめられるかと考えられるとそれぞれの場所が全然違うだけにまとめようがない気もします。
大垣養老は既に再編を受けて今の形になっていますし、農業系の高校は西濃地区に他にはありません(総合学科も西濃地区では今のところここだけでしたね)。 
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結局、一番手を付けやすいのは普通科高校ということになりそうです。
それも大垣市内の。
この中で歴史が古いのは大垣北と大垣南ですが、今の大垣東のあった場所にもともと大垣南があったというややこしさ。
大垣市内普通科4高で一番新しくここ最近、定員もだいぶん削られてきた大垣西が最もターゲットになりやすいというのは世間話としてずっと言われてきたことですが、果たしてどうなるでしょうか。 
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先述したように、西濃地区の高校再編は待ったなしです。
2029年度以降も凍結するというのは現実的ではありません。
2028年度まで高校の再編・統合を凍結したことがすでに「問題の先送り」でした。
これから2028年度までの定員削減は大変難しいかじ取りになりそうです。
今、西濃地区で定員に削減する余裕が一番あるのは大垣北と大垣東。
2028年度までの定員削減だけで乗り切る期間に、この両校の定員削減は避けられないかもしれません。
定員割れを起こしている高校はこれまでの定員削減で既に削減する余裕はありません。
これ以上削減すると定員がなくなってしまいます。
あるいは(先日示された見通しのように)地区全体の公立高校定員を受験生の減少ペースほどには減らさず緩やかにして、ということは今春のような公立高校全体での定員割れをしばらく常態化させたまま、2028年度までをやり過ごすことになるかもしれません。
そうなると2028年度までに、表向きの定員が決まっているが入学者数が遠くそれに及ばないため、実際の高校の運営が困難になる高校も出るかもしれません。
(公立高校に「経営破綻」はありませんが、生徒があまりに少ないと日々の学校運営が難しくなります)
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どちらにせよ、2028年度までの定員の動きにはこれからも注目です。
既に再来年春(2025年度入試:2023年現在の中2生)には西濃地区全体で定員削減するという見通しが出ています。
そして2029年度(2023年現在小4生の高校受験年度)からは高校の大再編が待っているだろうことは記憶にとどめておいてください。
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