6時半起床。
昨晩は帰宅も早かったので今朝の目覚めはよかった。
が、今日は最初から9時ちょうどに現地にいる予定は無かった。
このご時世である。
部外者が人混みを作ることを助長してはいけない。
発表直後を避け、10分ほど遅れて現地に着くようなイメージを描いていた。
その間、移動中に電話を受ければそこで止まるので
実際にはそれよりさらに遅くなるかもしれない。
行き先も決めていた。
東→北→南→工業→西(→商業)
まず倍率の高いところ、次は人数の多いところ、
そこからは時計回り。
今年、ウチの塾から商業を受けた生徒はいないが、
いてもいなくても北東南西商の5校は
毎年必ずチェックしている。
8時45分、家を出る。
北高の東にある通称(個人的にそう呼んでいるだけだ)「迷いの交差点」も
ためらいなく直進。
南に進む。
受験生・保護者の迷惑にならないようにと
いつもの駐車場に入ろうとしたが、既に満車だった。
仕方なく、別の選択肢を…と車を動かしている間に9時をまわった。
ほどなくして第一報。
裏通りだったので車を横に寄せてから電話に出る。
北高からだ。
ところが電波の状態が悪いのか、
話しかけても「聞こえない」という声が向こうから。
こちらは向こうの音声が聞けているのに。
もどかしい。
一度はそれで切れてしまった。
茫然としているともう一度電話が鳴る。
同じ子からだ。
今度は話せた。
同じ場所に一緒に受けた子たちがいたようで、
次々と電話を替わっては報告してくれる。
毎年書いているが、こういうのはひじょうにありがたい。
みんな声が弾んでいる。
当たり前だ、うかったのだから。
ほっこりしていると、以上ですという声。
え、一人残っているはずだが…
ここで若干緊張。まさかは無いはずだが…
戸惑っているとまた着信。
もう一つの電話が鳴っていた。
今度は今から向かう東高から。
ところがこちらも本人が「何も聞こえない」と。
電話の向こうが騒がしいので(合格発表直後だから当然だ)
周辺の音にかき消されて電話の声が聞こえないのかもしれない。
私も経験がある。
合格発表直後の現場で着信を受け、
電話を取ったものの何も聞こえなかったことがあった。
電波の状況では無い。
周りが騒がしくて声がかき消されてしまうのだ。
そのときは急いで人混みを離れ、
携帯を耳に押しつけて何とか聞こえたんだったか。
こんなに「聞こえない」で普段から雑踏の都会の人は
どうやって携帯を使っているんだろうと思ったが、
そもそも音声通話自体がメジャーで無くなっているか。
というか、逆にだから音声通話が廃れているのかもしれない。
閑話休題。
大声で呼びかけ続けたらお母さんに変わった。
○○です、うかりました。
おめでとうございます。
何とか聞こえたようだ。
気にしていた子だったのでこれは助かった。
自己採点は悪くなかったが、
内申点があまり無い中での受験だったので
本人も点数を気にしていたようだったのだ。
駐車場に車をとめ、東高に向かって歩く。
歩いている途中で北高最後の一人からの着信。
さらに続けて南高からの着信。
これで東高を出てからの行き先は工業、西高ということになった。
高校に向かう途中、駐車場に引き返す受験生とそのご家族とすれ違う。
何人すれ違っただろうか。
今年の東高の不合格者は37人。
岐阜地区の倍率の高い高校と比べて、
あるいは過去の入試(たとえばこの春、東高を卒業した学年)と比べると
ものすごく多いというわけではないが、
それでも1クラス分に相当する人数。
今年の西濃地区では最多だ。
昨年と違ってやや難しくなった入試、
手応えが無くあきらめがついていた子もいたかもしれない。
それにしても、である。
いつかの入試で見たような、
こちらが心配になるほど取り乱している子は見かけなかったが、
心中は察するにあまりある。
前を向いて頑張ってほしいと心の中で念じる。
9時20分、予定より10分遅れて現地到着。
東高の掲示は中庭の校舎の窓だ。
昇降口横の狭い通り道をすり抜けて現場に入る。
この時間ならもう受験生は移動し始めているだろうかと思ったら
予想に反してまだ人混み状態だった。
さっき書くのを忘れたが、
その前の道中、電話は立て続けに入っており、
この段階で未確認の東高受験生は1人だけになっていた。
かばんからメモを取り出して確認。
ちゃんと合格している。
確認作業はこれで終わりだが、
せっかく現地に来たのに本人たちに会えないのはどうよと
周りを見回すが、それらしき姿を見つけられない。
この人混みだけを見回していても仕方がない、
これは奥だ、奥に行ってみようと
体育館の近くまで歩いてようやく一人発見。
ベンチに座って友人との歓談中だった彼に声をかけて
次の現場に向かうことにする。
この段階で北東南の3校については全員の合格が確認できたので、
残すは西と工業。
人数的には1人だけの工業よりも西高が先かもしれないが、
東高からの順路的には当然、工業のほうが近いのでまずは工業。
最初の想定とは全く違う順路になった。
工業の合格発表を見に行くのは7年ぶりだ。
7年前も1人だけ受けた。
塾ができた当初は複数人受けた年もあるが、
近年は工業への進学者は本当に少ない。
気が付けば、累計の進学者数は数年前に 高専>工業 になっていた。
来年はどうだろうか。
工業に着いたのは9時45分頃。
書類を受け取りに来る中学校の先生らしき方が出入りする以外、
往来もなくひっそりとしていた。
さすがにこの時間になると受験生は既に中に入っており説明を聞いているようだ。
体育館の隣の校舎の北側と南側にはってある掲示のうち、
北側にある掲示を見て合格を確認。
彼は第二志望を書かずに受験した。
当然行けるはずの成績を維持していたから何の心配も無かったが、
やはり確認するとほっとする。
次は西高だ。
こちらも成績的には余裕のある生徒ばかりで
ぎりぎりという生徒はいなかったから
そんなに心配はしていなかった。
といっても入試は入試だ。
何が起こるか分からない。
そんな緊張感からなのか、
西高に行く交差点を通過してしまい、
高校のときの同級生(にして大学も1年違いで同じだった。今は大学教授をやっているようだ)の家が
かつてやっていた洋食屋(が今、何になっているかは敢えて書かないが)のあった交差点を曲がる。
現地に到着。
こちらも恐ろしいくらいにひっそりしている。
例年の西高はこんなふうではない。
在校生がグラウンドのあちこちにいて部活の練習をしていたり、
合格者に部活の勧誘をするべく中庭に待機していたりする。
2階の渡り廊下で吹奏楽部が演奏していたりもする。
今年は当然ながらそういう光景が見られない。
多分この仕事をしていて初めて見る、
ひっそりとした合格発表当日の西高。
合格者は既に体育館に入っている。
いつもは閉じられている出入り口は換気を気にしてだろう、開け放しだ。
それを横目に例年通りの場所にはられた受検番号を確認。
ちゃんと合格していた。
10時10分、全員の合格を確認。
心の中でガッツポーズ。
ここからは「春の高校巡回ツアー」へと移行する。
南→商業→北と巡って終わりだ。
南高へ。
ここを受けた子からは既に合格の報告が入っている。
もう急ぎの旅でも無くなっているので
いつものように浅中公園の駐車場に車を入れ、
桜並木をのんびり歩いて西側から学校に入る。
やはり(当然ながら)在校生の姿は無い。
ひっそりしている。
ここでも合格者は体育館で説明会の最中だ。
西高と同じく、新型コロナウイルス対応だろう、窓や扉が全開だ。
去年と違って中の声が丸聞こえになっている。
聞こえてきた話によると(盗み聞きしたわけでは無い)
制服の扱いがタイプA(学生服)とタイプB(セーラー服)という言い方になったようだ。
「男女」という区分をしなくなったということのようだ。
そんな話が後ろから聞こえてくる中、番号を確認。
電話があったんだから当然そこに番号はある。
歩いて駐車場に戻る。
並木の桜はつぼみがだいぶん膨らんでいるものも多いが、
まだ咲いてはいない。
一輪でも間違って咲いてないかなと目をこらしながら歩いたが、
見つけられなかった。
こんな悠長なことをやっていられるのも、
彼らが全員合格したからに他ならない。
本当にすばらしい子たちだった。
この1年の成長は目を見張るものがあった。
実にドラマティックだった。
彼らなら、倍率がもっと高くても
間違いなく全員合格していただろうと思う。
実際、出願状況によっては…という相談を
誰一人として一切していなかった。
進路希望調査の人数を見て動揺する生徒も全くいなかった。
倍率が全体に低めだったのはそんな彼らへの褒美だろうか。
商業へ。
大垣の南の端から北東の端へと移動。
さっきも書いたが、今年はウチからの受検者ゼロだ。
それでも確認に行くのは、
来年受験する生徒がいるかもしれないからというのもある。
着くとちょうど説明が終わった頃合いのようだ。
こちらにもやはり在校生の姿は全くなく、いつもの賑やかさは無い。
それだけでなく、校舎内で行われる各種購買も今年は無いようで、
体育館を出た合格者と保護者は
帰路に就くべく車に向かっている。
それを横目に見ながら、
合格番号の掲示をまず見て、
次に昇降口の掲示も確認。
今年も国公立大学への合格者が2桁(11名)出たようだ。
経済学部のある滋賀大学には3名、名市大にも2名。
このほか、県立看護大にも1名合格している。
進学171名:就職68名。
ウチの卒業生が1名、この春卒業なのだが…
と別の掲示を見たら、
全商3種目以上1級合格者の中に
名前を見つけてにやりとする。
頑張っていたようだ。
これを確認できただけでもここに来た価値はあった。
さて、移動。
北高だ。
今年の最多数が受験した(と言っても小さい塾だから何十人も受けているわけではもちろんない)高校が
最後になったのも、
要領の良い電話報告をもらっていたからで、ありがたいことだ。
北高はもともと合格発表日に在校生を入れていない。
だから例年通りの光景…と思ったら、
出入りの業者っぽい人の姿も無い。
そしていつもの掲示場所…と
目を向けて唖然とした。
掲示板がそこに無いのだ。
はっとして校舎のほうを見ると
番号が並んだ紙がはってある。
これか…と思ったが
合格者の番号の割には数が少ない。
こんなに合格者が少ないわけない、
などと思いながら近づいてみて事態がやっとつかめた。
人の密集を避ける狙いだろう、
校舎の端から端までの窓を使って
受検番号順にばらばらに掲示してあったのだ。
これなら例年のような人混みは避けられたかもしれない。
が、これだと帰国生徒選抜の子は(2人しか合格者がいないのにその枠だけの掲示場所がある)
発表の瞬間そこにいたらプライバシーゼロのような気がしたが、
まあそれは私の考えることではないか。
それはさておき、
これなら最初に北高に来ればよかったかもなあ。
見たことも無い珍しい合格発表風景だったろうなあ。
その現場を確認したかったなあ。
既に全員の合格は確認できているので
のんきにそんなことを考えながら、
順番的に彼らの番号があるはずの
校舎の西の方へと向かう。
番号はもちろんちゃんとある。
11時20分頃だったろうか。
東の体育館や武道館から
合格者や保護者がわらわらと出て来ている。
こちらも例年のような購買はやっていないようだ。
いつもよりも解散が早い。
その波に呑まれないよう、
私もさっさと車に乗って立ち去る。
次にここに来るのは、例年通りなら秋か。
彼らはどんなふうに成長しているだろう。
お昼も近づいていたので塾には寄らず、
いったん帰宅することにした。