2013公立高校入試の問題点(1)

ずーーーっと書いてなかった(自分の中で宿題になっていた)
この春始まった新しい公立高校入試制度の問題点
いくつかあるのですが、
特に問題だと思った点を今日は一つだけ書いておきます。
ただ、この話は今の入試制度をある程度ご存じの方、
たとえばこの春の入試を実際に経験された受験生・保護者の皆さんや、
学校の先生方、同業者などにしか分からない話かもしれず、
新しくなった入試制度そのものをよくご存じない方には
上手く伝わらないかもしれません。
長くなりますので時間の無駄だと思う方はパスしてください(笑)。
 
以下、説明が分かりにくくなるので、
定員のうち、標準検査だけを受けて合否を判定する=標準枠
定員のうち、標準検査+独自検査で合否を判定する=独自枠と表現します。
また、公立高校入試は正式には「受検」するものですが、
ここでは「受験」と表記することもありますので、
あらかじめご了承ください(そんなことにこだわる人もいないか)。
新制度が分からない方は下の図も見ながらイメージしてください。
(来年春も同じしくみでやることは既に発表されています)

 
では、本題。
私がこの春の公立高校入試(第一次選抜)を見て一番問題だと思った点、
それは

独自枠で出願した受験生のうち、
結局どれだけが独自枠で合格したの?

というものです。
去る3月19日の合格発表では、標準枠も独自枠も一斉に張り出され、
「独自枠の合格者」「標準枠の合格者」という違いを
明らかにして発表することは(私が見て回った高校では)ありませんでした。
独自枠の出願者と標準枠の出願者で
受検番号を明らかに分かるように変えた高校もありましたから、
それを見れば
独自枠の出願者が何人合格したかは確かに分かります。
しかし、その独自枠の出願者で合格した生徒のうち、
何人が本当に独自枠で合格したのかは分かりません。
独自枠で不合格になり、標準枠で合格したかもしれないからです。
独自枠の募集人数はいちおう決まっていますが、
その募集人数まで独自枠で合格させたかどうかも分かりません。
独自枠で予定していた人数が埋まらなくても
その分は標準枠に回せばいいわけですから、
全体として問題ないわけです。
結局、独自枠で出願した受験生が
そのまま独自枠で合格したのか、
それとも独自枠で落ちて標準枠に回って合格したのかは
分からずじまいなのです。
このことはつまり、独自枠の実質倍率も分からないということです。
独自枠がどれくらい入りにくいのか、
あるいはどれくらい入りやすいのかということが
情報として一切残らないわけです。
 
この点は前制度よりも不透明になったと言わざるを得ません。
以前の特色化選抜では、当然ながら合否がはっきり出て
(つまり特色化の枠で何人合格したかも明らかになって)
不合格になった生徒が約1か月後の一般選抜を受けたわけですから
新制度の「特色化選抜」部分に相当する独自枠に関しては
受験者のうち何人が合格したかという、
入試に関する単純で基本的な情報が
ブラックボックスの中に入ってしまったわけです。
 
県教委に訊けば、
標準枠も独自枠も「第一次選抜」という一つの入試だから
合否を別々に公表する必要は無い、
というかもしれませんが(私の勝手な忖度です)
上の図を見ても分かるように、
実際には2つの異なる入試が一体化された状態ですから
この説明には無理があるように思います。
そして、こうしたブラックボックス化の結果、
極端なことを言えば、
高校側の都合によって受験生を独自枠で合格させたり、
標準枠に回して合格させたりという
恣意的な運用もできてしまうかもしれないのです。
(どう合格させたか、外からは分からないわけですから)
 
選抜方法に関する情報公開や成績開示といった
ここまで県教委が進めてきた入試の透明度を高める流れに
逆行していないでしょうか。
 
この春、我が塾に職業科進学者が何人かいたおかげで、
私はこの点により問題意識を持つようになりました。
普通科に関して言えば、上記の問題はほとんど気にならないでしょう。
もともと独自枠がとても小さいところが大半ですし、
独自枠の要件にあう対象者も限られていて、
その子たちがどういう形で合格しても
全体にはそれほど影響は与えませんから。
ところが職業科だと話が全然違うのです。
まず独自枠が大きい(30%という上限の)ところが多いうえ、
職業科の場合、複数の学科があるために
第2志望・第3志望を書かせるところがほとんどで、
独自枠受験者も第2志望、第3志望を書けますから、
独自枠受験した生徒が独自枠で第2志望に回ったのか、
それとも独自枠でいったん落ち、
標準枠に回ってから第2志望で合格したのか、
その動きは標準枠の受験者にも大きな影響を与えるのです。
来春以降の入試で進路指導される中学校の先生方も
この辺の実際のところが分からないと困惑されると思います。
もちろん、私たちも困りますが(苦笑)。
 
じゃあ、どうしてほしいのかという話ですが、
合格発表を標準枠と独自枠で分ける、
つまり合格者の受検番号を標準枠合格者と独自枠合格者で
分けて掲載することが望ましいと私は考えます。
しかし、それには弊害があるということなら、
せめて県教委が発表する高校ごとの合格者数の一覧では
各高校において何人が独自枠で合格し、
何人が標準枠で合格したかを明らかにしてはどうか
私は思うのです。
 
他の問題点については、またの機会に書きましょう。
今日はこれまでにします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これ、最後まで読む方は何人ぐらいいるのかな・・・。
同業者数名ぐらいだろうなあ(笑)。