前回から続く。
昼食から塾に戻ってくると
そのちょうどのタイミングで
北高に合格した子たちと
そのお母様方がいらっしゃった。
急いで中を用意して入っていただく。
歓談。
「入試の朝、車の中でけんけんがくがくを見て
先生の書いたものを何度も読み返していたようですよ」
入試の朝、メールを送るとか
応援グッズや卒業記念品を配るといった
今時のやり方を一切とらない我が塾だが
こんなローテクな方法でも
彼らの心に響くのであれば大変嬉しい。
まあこれも3年間ずっとやりとりしているから意味があるのであって、
入試の前日に突然、長々と書いた手紙を渡しても
彼らの心の中にすっと入っていけたかどうかは分からない。
結局は何事も積み重ねだ。
そう思うからこそ私は、何でも「イベント仕立て」にして
お祭り騒ぎでその気にさせるという流れには徹底的に逆らってきた。
確かにお祭り騒ぎには魔力がある。
とりあえず参加していれば、何か得たような気分になる。
しかし、周りがお膳立てしたイベントに乗っかっただけの者が
何かしら確かなものを得られるかと言えば、答えはノーだ。
お膳立てした側、ここではすなわち塾側の人間が
満足感を得られるだけ。
受験するのは彼ら塾生なんだから、私が満足したって仕方がない。
彼らに自信の源泉となる手応えが必要なのだ。
だから私は彼らの日頃の地道な努力が目に見える形になるよう
いろいろと配慮してきたつもりだ。
話が逸れた。元に戻そう。
何はともあれ、そうやってけんけんがくがくを
使ってくれた子がいたというのは、ありがたいことだ。
生徒たちやお母様たちは
すぐに帰りたかったかもしれないのだが
私のほうがいろいろ聞いて引き留めてしまった。
楽しかった。
皆さんお帰りの後、時間が空いたので
前回写真を掲載した2階窓の掲示を
一人で作っていた。
すると、しばらくして階段を上る音が。
東高に合格したF君が、
お母様だけでなくお兄さんも伴って現れたのだった。
お兄さんは11期生、つまり4年前の卒業生。
高専に進み、留年することもなく
無事に4年生まで終えようとしている。
残すはあと1年だ。就職ももうすぐ決まるとのこと。
ただし、大学生のように最終学年をのんびりしていると
5年生で留年なんていう子も結構いるそうだから
最後の1年が大事だと本人が語っていた。
無事にエンジニアになれるよう、
ここからの1年も頑張ってほしい。
それにしても、
在籍時はかわいらしい少年だったのに、
今ではもう大人だ。
時が経つのは早いものである。
自分も老けるわけだ。まあ仕方がない。
この前、新しく入った子に45歳ぐらい?と
言われたときは、かなりショックだったが。
F君のご家庭とはかれこれ8年のおつきあいだった。
ウチは小学校5年生からしかやってないから
これは歴代の兄弟姉妹ご通塾家庭でも
長いほうである。
2人ともいい子で思い出深い子だ。
このご縁に感謝したい。
そしてよく最後まで通っていただいたと改めて感謝を申し上げた。
さて、F君ご一行様をお見送りして
私は再び一人になった。
掲示の続きを完成させ、カメラに収め
私は一人満足して雑用を済ませると
家に戻った。
今日だけは正月気分。
浮かれて帰ったのだった。