高校入試の大変革の始まり!?

まだ政府の大方針が示されただけ、それも(かつての業者テスト追放のときのように)全国一斉に具体的に早急に進めろという号令が出たわけでもないから、仮に岐阜県に導入されることになったとしても数年先のことだろうが、高校受験界隈ではとても大きなニュースが飛び込んできた。


首相「単願制」見直し検討を指示 入試で公立高選びやすく:中日新聞Web https://www.chunichi.co.jp/article/1057009

 (有識者の)提案によると、受験生が志望順位を提出した上で共通試験などを受験し、システムが内申点や試験の点数、面接の結果なども考慮。合格基準を超えた学校の中から志望度が最も高い学校を自動的に割り当てる。
有識者は、アルゴリズム(計算手法)を活用すれば瞬時の割り当てが可能と説明。意欲のある都道府県で先行的に導入し、モデルケースの創出に取り組むべきだとした。


かつて「特色化選抜」を全国に先駆けて導入し、そして全国に先駆けて終わらせた(苦笑)経験を持つ岐阜県のことである。
今回もこの新しい試みのモデルケースとして最初のほうに導入される県となる可能性は十分あると思う。

岐阜県の現行のWEB出願システムはWEB出願手続きだけでなく、入試後の結果(合否)も学力検査の得点情報もわかるようになっている。
つまりシステム側で合否や学力検査の得点を一括して管理するシステムはもうあるのだろう。
今回の政府の新しい指示に対応しやすい素地は既にあるように思うが、どうなのだろう。
他方、岐阜県が先送りしてきた公立高校再編統合とも時期的に重なりそうだから、「両方いっぺんにはできないだろう」とか、反対に「両方あるからまとめてやりやすいだろう」とかいろいろ推測する。

ここから先は「仮に岐阜県の現行の公立高校入試制度にかぶせるように導入されたら」という私の勝手な妄想である。
その場合のネックは独自検査をどうするかであろう。
初日を学力検査、二日目を独自検査等と分ければ、今の独自検査のしくみは維持できるだろうか。
例えば一日目は大学入学共通テストと同じように最寄りの公立高校(大学入試の場合は近くの大学等だが)が会場として割り当てられ、受検生は志望校に関係なく近所で学力検査を受検し、独自検査を受検したい生徒は二日目に第一志望の高校に受けに行くというのも考えられる。
この場合、第二志望から先の独自検査は受けられないことになるだろうが、独自検査というものの性質を考えてもそれは致し方ないだろう。

仮にこれが導入されれば、高校受験を巡る状況は大きく変わるだろう。

まず公立高校間での「輪切り」が進む可能性がある。
第一志望に落ちても第二志望や第三志望の公立高校に合格できるしくみとなれば、「願望・現実的・保険(・保険の保険)」といった組み合わせの志望の出し方ができる。
ダメもとで第一志望を高めに書く生徒が増えるだろうか。
といっていきなり西濃地区
の成績優秀者がこぞって岐阜高校を第一志望とするようなことは地理的にも考えにくいだろうが、現下の入試制度で(成績が十分でも)「何があっても落ちたくない」と慎重になっていた層がより「上」を志望校として書くことで、成績レベルが上の学校のレベルがさらに難しくなり、そうでない高校との格差が拡大することは考えられる。
現在、成績上位が○○高校でそれに続く位置に△△高校があるという場合、△△高校のトップレベルは○○高校でも上位層ということは普通にあるが、そういう状態は減るかもしれない。
そうなれば、その反対に○○高校にぎりぎり入っていた層は△△高校に回されることになるだろう。
これは普通科に限った話ではなく、同じ系統の専門学科の高校間でもあり得る話だ。

他方、定員割れが続く公立高校の福音となる可能性もある。
公立高校が公立高校の「滑り止め」「保険」としての需要も取り込んだ結果、私立高校の併願抜きでも高校受験が完結する。
この結果、公立不人気校にも(第一志望ではないが)定員を埋めてくれる生徒がまわって来る可能性はある。

もっとも、この年度末に決まった政府の方針により高校授業料無償化時代となり(授業料以外の費用も含めて)経済的に公立高校という枠にこだわる必要がなくなれば、公立と私立がいよいよ同じ土俵の上にのって戦うことになるからそう簡単な話でも無いかもしれない。
今の公立不人気校が第三志望・第四志望でも書かれることがなく、本命の公立に落ちた生徒が無償化された私立高校にまわる可能性もあるということだ。

私立高校にとってはどうなのか。
公立が一回の受験で簡単に「第二志望以下でも入れるところには入れる」という世界になれば「公立が駄目だったとき」の併願私立という概念は消えるかもしれない。
私立高校でも「あの高校だから行きたい」と第一志望にされるポジティブな強い魅力がないところは苦しくなる。
公立第一志望でも私立を併願しておくことがほぼ当たり前だった世界から、併願で私立を受けることが一般的ではなくなる世界に変わるかもしれない。
そうなったら、私立に関しては入試を受けるかどうかの段階から中学生を振り向かせないといけなくなり、私立
高校側も大変だ。
公立との併願で私立を考えていた→私立がよさそうだから単願に切り替えたという生徒もこれまでいただろうから、そもそも併願も考えないかもしれないという影響は小さくないだろう。

あるいはそういう考え方自体が根底から変わるのかもしれない。
高校無償化で公立も私立もフラットに考えられるようになったら全く違う考え方が占める違う世界になっているのかもしれない。
が、公立が一回の試験で複数の高校を視野に入れられるのに私立は別でバラバラに入試をやっていれば、受験生から見たら「私立?受験が面倒だ」ということにもなりかねない。
生徒募集そのものだけでなく、併願入試で1,000人単位で受験生を集めてきた私立高校なら受験料15,
000円×1,000人単位、つまり千万の収入がどうなるのかというところにも影響する。

・・・と書いているうちにいろいろさらに思いついたが、まだまだこの話は続けられそうだから今日はここまでにしておこう(改めて断っておくが最初のニュースから話を膨らませた根拠もない私の妄想である)。
妄想をシリーズ化するか。
「シリーズ『妄想・高校入試大変革!?』」とか。