公立高校入試前、最後の日曜日は本番模擬演習。
開校以来、ずっと続けている恒例行事の一つだ。
5教科の学力検査に限りなく似せて作った問題を使って、本番さながらに行った。
こんなギリギリに、と思われる向きもあるかもしれないが、各教科の模擬演習そのものは、ラストスパート期間に入ってから、既に40回以上やってきている。
5教科セットで換算したら、約9セットというところだろうか。
すべて点数もつけている。
だから、この本番模擬演習は、結果を見てあれこれ考えることが目的ではない。
(そもそも出願変更期間も過ぎているから、あれこれ考えている場合ではない)
この本番模擬演習は、まさに「リハーサル」のつもりでやっているのだ。
時間も当日と全く同じだし(そのため今日は集合もいつになく早かったが、いつも通り、誰一人遅刻もなくすばらしかった)、
解答用紙にだって、本番と同じように受検番号しか書かない。
(例年書いていることだが、公立高校第一選抜を受ける生徒は「受検」生、番号は「受検」番号である。)
受検番号は、本番と同じ番号を使った(使うことができた)。
西部中も赤坂中も、昨日までに入試の事前説明を終えており、全員が受検票を渡されている。
だからみんな、受検番号も分かっているのだ。
これがもし、受検番号が分からない、つまりまだ学校から受検票を渡されていないという子がいた場合には、やむを得ず塾生番号を使ったりするのだが、今年はその必要はなかった。
もちろん、大事な本物の受検票、さすがに塾では使わない。
塾に持ってきてなくした、なんてことがあったら大騒ぎだ。
番号を書いた仮の受検票もどきを、こちらで用意した。
彼らに本番さながらのリハーサルをやってもらう以上、こちらも真剣だ。
問題用紙と解答用紙の配布と回収に至るまで、一人ひとり丁寧に。
いつものテストのように「後ろに回して~」とか「後ろから集めて~」なんてことはしない。
どこまでも本番仕様だ。
ここまで真剣にやるのだから、いっそどこかの高校の教室を借りてやりたいくらいのものだ。
「朝7時40分にそれぞれが受ける高校の正門に『集合』してから塾に来てもらうか」などと冗談をいうくらいのレベルだ(さすがにそこまではやらない)。
服装も制服でそろえてもらった。
ただ、これは私からは強制していない。
例年、どうするかは彼らに訊いている。
制服の年もあったし、私服の年もあったことも事前に説明している。
その上での多数決だ。
今年の生徒たちは、今の政権与党よりも圧倒的な多数で制服を選択した。
実はこれはちょっと意外だった。
1週間ほど前に話したときの反応から、何人かは制服を支持するだろうとは思っていたが、これほどの大差がつくとは思っていなかったのだった。
“多数決が民主主義なのではない、少数意見も尊重して熟議を重ね…”なんて言っている暇もないので、こうなれば即決である。
(もちろん、何らかの事情で制服を着ることができない場合は、個人的にその旨を伝えてほしいと言ってある)
果たして今日、彼らは全員、制服で来ることになった。
私にとっては新鮮な光景だ。
制服で来る行事など賢学塾には存在しないから、私が初めて制服姿を見る生徒も多い。
彼らにとってはこれが日常の姿なのだろうが、私にとっては何か違う世界に放り込まれたような感じだ。
彼らでなく、私のほうの身が引き締まるような感じだ。
本番仕様にこだわるなら、やはりこのほうがいいのだろうか。
とはいえ、来年もこちらから一方的に決めるつもりはない。
今の中2生、すなわち第23期生は、どちらを選択するだろう。
それはまだ先のこと。
ただ、まもなく彼ら全員に初めて志望校を訊く。
第22期生との日々が残り数日となった今、第23期生の戦いも、静かに始まろうとしている。