からくり

金曜日にご挨拶にいらっしゃった卒業生のお母様のおひとりがおっしゃった。

「この塾は質実剛健という感じで・・・」
はい、ありがとうございます。
そういう感じの塾です。

よくも悪くもキラキラしたところが一切ないんです。

今どきの塾ならどこでも、生徒を集めてハロウィンだクリスマスだとちょっとしたイベントを当たり前のようにやったりするのだろう(誤解してほしくないが、それはそれぞれの塾さんの考え方だからここでそれを批判したいとかではないし、だいたい私にそうする資格もない)が、28年間1回もやったことがない。
せいぜいエイプリルフールで私が冗談の一つでもいうか、クリスマスのときにサンタの帽子をかぶって授業をしたことがあったぐらいのものである。
インスタもTikTokもやっていない。
LINE公式アカウントは作ったが個別の連絡用・受付用に使っているだけで塾のPR等には一切使っていない。
Youtubeは公式サイトにある自己紹介動画だけに使っている。
ネット上でまめに更新しているのはこの雑文ブログ記事ぐらいで、今日もいまどきほとんど読まれない長文を好き勝手にこうやって書いている。
ウェブサイトも前時代的な手作りだ。
広告も地味だ。
ちょっと前までは白黒のリソグラフで印刷したものだった(最近それをやめたのは機械の寿命のためもあるが、そもそも一昔前と比べて印刷コストが劇的に下がっており、気がつけば安く上げるために自分で印刷していたのにすっかり意味不明な状態になっていた)

そんな塾だが、少ない予算でできるだけ彼ら塾生の学習環境を少しでも向上させようと努力はしてきた。
今どきは珍しくもなんとも無いプロジェクターだが、安いPCとともに教室に入れて電子黒板風に利用し出したのも15年以上前だし(ここでもコストを考えて天井吊り下げのいいものは設置していないが)、同じ頃だろうか安いカメラと安いPCを用意して授業の録画が見られる態勢も整えて、特に中3の入試対策講習を欠席した子をどうフォローするかという長年の懸案をある程度は解決した。
広報宣伝で言えば自作のウェブサイトを始めたのもこのあたりの塾の中では早いほうだったはずだ。

できるだけお金をかけずに

お金をかけずにというところがポイントで、お金を出せばそんなに苦労せずに教室に本格的な電子黒板システムを導入できるかもしれない。
教室のホワイトボード、開業時は黒板だったものの上にホワイトボードシートを自分で貼り付けたものだが、業者さんに頼んだら丸ごと付け替えて立派なホワイトボードにもなっただろう。
また、お金をかければ公式ウェブサイトも画像をふんだんに使ったもっと派手なサイトをいくらでも業者に作ってもらえるだろう。
お金をかけなくても私が時間をかけて勉強してそういうサイトを作ればいいかもしれない。
ウェブサイトを高度にすればするほど自分でそれに手を入れようと思ったらそれに見合ったスペックのPCも用意しなければならない。
弊塾には教室や事務室に何台もPCがあるが、何とかWindows11にアップデートできてよかったーという程度の低スペックなものばかりだ。
ああ、Windows10からアップデートできない貧弱なスペックのものも・・・(もういよいよサポート期限が秋まで。どうするかなあ。PCを減らすか…)
思えばPCについては開業したときに買ったものが一番高かったぐらいかもしれない。

もちろんただのケチでは仕方がなく、必要なものは揃えなければならないし、必要なことはやっているが(昨年はガレージの塗装の塗り直し・照明の付替えと教室のエアコンの内部清掃などやったもらったか)あれもこれもと派手にやればお金がかかり、つまりそれはみなさまからいただく受講料にはね返ってしまう。
「爪に火をともすように」という言葉があるが、そんな感じで運営しているからこの水準の授業料でやっていけるというのはある。

何も知らない人は「この料金システムには何かからくりがある」と思うかもしれない。
上げ底になっていたり(弁当か)、裏側に何もなかったり(張りぼてか)、生地が薄かったり(服か。まあ私の髪の毛が薄くなっているのは否定しない)・・・

が、こういうわけでこのご時世に珍しく何のからくりもないのだった。
からくり…何か作ったほうがいいのだろうか(作ってどうする)