かつてあった駅前の高校受験対策専門塾

先日書いたように、前世紀末ぐらいまでだろうか、大垣駅前には高校受験対策をほぼ専門に扱う塾が複数あった(ここで話題にしている塾は駅前にあると言っても今ある県内大手の某塾とか某塾ではない。当時あったここで話題にしている塾は今は一つもないはず)
大きな塾が高校入試対策「も」しているのでなく、中3生を中心に西濃一円から生徒を集め、学期中の日曜日、あるいは夏休みや冬休みの期間に受験対策講習を行うことを主業としている塾であった(逆に平日は「副業」として他学年の生徒も集めていたと聞く)
そういう塾の生徒たちはJRで、あるいは養老鉄道で、市外からも広く集まっていた。
だから駅前に立地していたのである。

昔そういう塾が成立していたのは、以前から書いている「岐阜新聞テスト」が当時は圧倒的な力を持っていたから。
特にあのテストが中学校で行われ、ほぼみんな参加して実施されていた30年以上前まで(旧文部省が公立中学校からの業者テスト追放を通達したのが1993年春だったか)は、岐阜新聞テストこそが高校入試の主役で、岐阜新聞テストの結果によって出願校は振り分けられ、自分が行く高校はそこで決まっていた。
岐阜新聞テストの結果次第だったあの時代、「入試本番で頑張って点を取るように勉強しているから」と本人やご家庭が主張しても、1月までの岐阜新聞テストの結果が悪ければ中学校側が受験を「許して」くれなかった(というと大げさかもしれないが、それに近いことが行われていた。今では考えられないが)
中学校間での連携も「お見事」で、そういう調整の結果、どの高校も倍率が高くない状態に収まって(商業・工業のような学科がいくつかある高校では学科による凸凹までほぼきれいに調整されていた)、入試本番で落ちる生徒は限りなく少なくされた。
だがそれは「みんなうかって幸せだった」のでは無く、出願の前に志望校を断念せざるを得なくなってうかる落ちる以前に出願さえできず涙をのんだ生徒が多かったということである。
あのころは入試そのものの合格・不合格でなく、岐阜新聞テストの結果で「断念」させられるかどうかのほうが多くの生徒に関わる問題だったと言っていい。

だから塾は生徒たちが断念させられることなく、志望校にまっすぐ向かえるよう、岐阜新聞テストで好結果を出すことに力を注ぎ、出題予想までして対策をしていた。

今から考えてみれば何とも摩訶不思議な世界であった。
岐阜新聞テストは入試の「模試」だったはずだが、その模試で結果を出すための模試をやっていたところもある。
「模試模試」とでもいうのだろうか(もしもし?)。

最初に書いた高校受験対策専門のいくつかの塾も、岐阜新聞テストで結果を出すことがメインのお仕事だった。
当時のことなので、新中3生のご家庭に電話で熱心に勧誘をしていたらしい。
その勧誘電話がしつこいので、弊塾に通っている生徒のご家庭が「もう塾に通っているから結構です」と告げたら「どこの塾ですか?」「賢学塾です」「そんな近くの小さい塾に行っていても高校受験の対策はできませんよ」と結構な勢いで言われたという当時の塾生の話は、今も覚えていてときどき笑う。
もちろん弊塾生(のご家庭)にはそんなセールストークは通用しなかった。

とここまでが昔話。

昔話と言っても、21世紀に入ってもそういう態勢からの根本的な変革ができていない(相変わらず岐阜新聞テストを受験対策のメインにおく)塾が少なからずあったようだ
岐阜新聞テストで大規模な製本ミスがあって大混乱した(一部教科の試験が成り立たなくなった)のはいつだったかなと検索したら、9年近く前(2016年1月)だったようだ。
あの当時はまだこの「事故」で大騒ぎした塾が結構あったように思う。
あのとき既に誰も受けていなかった弊塾内では全く騒ぎにはなっていなかったが(私一人が「岐阜県高校受験界のニュース」としてブログに書いた程度のもの)
今から思えばあれが岐阜新聞テストが今日のように弱体化する一つの契機だったかもしれない。
今同じようなことが起こっても当時ほどの騒ぎにはならないだろうと思う。
業者テスト追放の通達から、他県にもあった業者テストの数々はその力を急速に失っていったが、新聞社が主催していた岐阜新聞テストはその中でも根強く続いてきた。
全国的にも珍しい事例だろう。
今、そういう他県での変化が30年の時を経て岐阜県にもやってきているということだろうと思う。

30年以上前までとは異なり、今の時代、中3生は入試本番で点数をとらないといけないのである。
そのために弊塾の高校入試対策も運営されていて、今は「賢者の石」(前から何度も書いている弊塾の岐阜県高校入試編別過去問題集)に取り組んでもらっている(これをやるのは授業外の課題)
模試や実力テストは、本番で点数がとれるかどうかを試しているに過ぎない。
弊塾はまっすぐ入試本番を見つめ続けている。

今日から「冬期講習冬休み期間の部」に突入して忙しいのに、いきなりたくさん書いてしまった。
一行で済ますかもしれないと書いたのは誰だ。
無理しないで書こう。